微生物災害対策の歩み

レジオネラ対策

2019年夏頃、千葉県庁内NPO窓口にて。
当方はNPO法人環境微生物災害対策協会としてレジオネラ属菌対策の経験から現場の実態状況は決して安心できる状態ではないため、オリンピックに向けて指導をより強化してほしいと担当に申し入れてくれるようにお願いしていました。
浴槽のレジオネラ属菌対策は定期的に行っており、また室内ともあって大過なく過ごせると思いますが、屋外のクーリングタワーはまだ問題は多く残っていると洗浄時の実態写真を添えて口頭で伝えました。レジオネラはその名の通り、アメリカのフィラデルフィア市における感染から始まり、今では全世界に定着し、常識的な感染症となっています。
縁あって、平成9年(1997年)に自衛隊入間基地にてモルキラーMZ(平成8年特許取得の殺菌剤組成物)を使用する洗浄テスト試験を行い、想像を超える効果が東京都衛生研究所の検査で証明されました。なお、その後検査方法や洗浄実技を2カ年かけて修得し、都内スーパー銭湯の実態及び洗浄の写真を提示してレジオネラ属菌対策の重要性を平成13年(2001年)に厚生労働省健康局の担当者に提案しました。しかし、1年4か月後に宮崎県日向市において自死も含めて8名の犠牲があって初めて塩素消毒を徹底的に行えという通達を出すに至りました。

そして、先に述べたクーリングタワーの例を挙げるまでもなく、塩素消毒によって施設の老朽化は著しく、施設管理者を悩ませています。平成18年(2006年)4月、静岡県の協力を得て行った実験をもとに厚生労働省健康局生活衛生課に塩素以外のレジオネラ対策の実績・検査・実例を紹介しました。その後、同年8月には厚生労働省健康局生活衛生課は「塩素消毒のみを請うものではない」と通達を発信しています。

防カビ技術、その夜明け

 リーマンショックの後、既存のカビ対策専門業者が次々と消えていく中、耐久性防カビ方法はレジオネラ事件と同じ宮崎県において改めて証明されることになりました。

奇しくも東日本大震災後すぐに宮崎県の特殊作業(主としてスーパーマーケットの外壁につく駆除)業者より防カビ剤と技術の提供委託の依頼がありました。食品スーパー(特に天井部分のカビ)の問題で天井材(ジプトン)のカビを防ぐ効果を長期的に維持したいということで、平成11年(1999年)通産大臣より認定された「特定新規事業」に明示した方法で行うことに決し、以来11年間で西日本を中心に全国1500件、15万㎡以上のスーパーマーケット、病院、美術館などで実行しました。施工後3年~5年の保証を設け、技術を向上させて再発生の事例は実に少なくなりました。

疫学の先生に云われた10年以上のエビデンスを確立させました。全国的な普及によって多くの諸問題を解決するために現在出版の用意を進めています。経済産業省の業種分類で「その他の分類できない」事業から新しい業種分類として市民権を確立することを目指しています。新型コロナウィルスの蔓延により、早く社会に貢献すべく意を決しました。微生物災害対策として経験する中で、実態に基づいて得たことは、細菌とカビ、ウィルスと縦割りで問題を分けられるものではないということです。

事実上の市民権、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)への登録は既に2周目、すなわち5年経過して末尾の記号はAからBになっています。
NETISでは取扱者はNPO法人環境微生物災害対策協会によって2日間の講習を義務化しており、先の宮崎県の施工者らは座学による2日間の講習に加えて現実の施工現場において実習し、責任ある施工を担当できるようになりました。
平成15年(2003年)の建築基準法の改正には有機化合物、特にホルマリン、有機リンなどの毒性の強い殺菌剤やシロアリ駆除剤の使用禁止を打ち出しました。それに先駆けて衆議院の厚生労働委員会で『カビ・ダニ対策』が議題となり決議されたと報じられましたが、その後何故か音沙汰がなくなりました。今なお全国470か所の保健所ではカビのクレームについて適切な解決方法を提示できることが出来ません。
ようやく微生物災害対策の重要性が一般に理解され始めたのではないかと考えています。食品スーパーマーケット、温泉旅館の方々の中では、何故もっと早く提案してくれなかったのかとお𠮟りを受けたという報告も受けています。
新しい問題として、植物工場などに活用され植物の成長にも貢献しているLEDが一方でカビの成長を促しているとあって、ますます重要な技術であることが現場で証明されています。